この話の結論を先にいうと、あなたがいま大事だと思ってキープし続けているモノや考えを思い切って捨ててしまったとしても、たぶんなにも困らないよ、ということです。
引っ越し先に本をもっていくか悩む
かなり昔の話になります。
ぼくは20代の半ばになってようやくじぶんが何も知らない人間なんだと知り、以来給料の一部は本代に使うことを決めて実行し続けてきました。
当時はKindleなどありませんから、紙でできた本がすべて。住んでいた狭い部屋は本で床が見えなくなっていくほどでした。
いままでの人生で本を読んでこなかった人間にとって、読書は目から鱗がぼとぼと落ちる経験でした。全部書いてるやん、と。
主に仕事に生かせるようなジャンルを中心に、名著と言われるものは手あたり次第買って読みました。
その経験はいまも土台になっています。
さて、そんなぼくにもキャリアの途上で、転勤辞令が下るタイミングがありました。引っ越しをともなう遠方への転勤です。
その際に悩んだのは、当時なけなしのお金で購入した本たち。ざっと300~400冊です。持っていくか、処分するか。悩みました。
なぜなら、その本たちこそ当時のぼくの支えだったからです。
悩んだら、本を開きました。アイデアを求める際にも本を開きました。ひとり暮らしは孤独ですが、本に囲まれていた当時は寂しさは微塵も感じませんでした。それぐらい本に助けられ、本を大切に思っていたのです。
しかし、別の気持ちもあったのです。
この転勤をきっかけに、自身だけで勝負してみようかなと。
つまり、頼るべきを本ではなく、じぶん自身にする。
そういう成長のタイミングにできるんじゃないかと。
駆け出しのコンサルタントだったぼくでしたが、実は当時ある経営者からつぶやきのように言われたことが心に引っかかっていたのです。
「こまさんの言うことって、正直に言うと、誰かの借り物の言葉みたいに聞こえる。あなた自身ほんとうはどう思っているのか?それが聴きたいなぁ。」
射貫かれるような言葉でした。
たしかにぼくの頭の中にはたくさんの先人の知恵や言葉がストックされていたのは確かで、多々引用させていただいていたわけです。
そして同時に、じぶん自身の言葉がないことも自覚していたころだったからです。要は自信がなかったんですよね。
そんなこともあり、借り物の言葉に頼るのは卒業しようと思っていた矢先の転勤辞令だったわけです。
300冊を一気に捨ててみた
身がちぎれるような思いでしたが、一気に捨てました。
古本屋に売るとかせず、バサッと捨てました。
もし、やっぱりあの本が必要だとなったらまた買えばいい。
そう思って「ありがとう」と感謝して捨てました。
当時繰り返し読んだ稲森和夫氏の「生き方」を捨てる際には、ちょっと涙が出そうでした。トイレで読みながらどんだけ励まされたことか、と。
鍵山秀三郎氏の「凡事徹底」も繰り返し読んだ一冊でした。
単純こと、かんたんなことを極めていくんだよ~、そう言われた気がしました。
300冊分のスペースが空くと、かなり床が見えました。こんなに床は広かったんだ、と。
そして本に囲まれて安心していた自分が、一気にパンツ一丁になった気分になりました。スースーします、こころが。
頼りにしていた先輩たちが急にいなくなったようで、不安でした。
もう大切なことは自分の中にあると信じる
転勤し、新たな住まいは本なしでスタートしました。実際読む時間もなかなかとれないほど忙しい日々だったわけですが。
さて、いままで依存していた本がなくなってどうなったのか。
結論、なんにも、困りませんでした。
なくても大丈夫でした。
むしろ、あの社長にいわれた言葉通り、誰かの借り物の言葉を探すのではなく、じぶん自身の言葉を内側で探れるようになっていきました。
言葉を選ぶようになったと言いましょうか。
ペラペラしゃべるより、じっくり相手の話に耳を傾けるようになりました。
たぶん物事の本質はシンプルで、数多くの言葉が必要というよりも、的を射ることが大事。そういう思考をするようになりました。
当時まだ30代半ばという未熟な人間でしたが、
大切なことはすでにじぶんの中にある。
本を持つより、自身を持とう。
それがほんとうの自信につながっていくだろうと。
ちなみに本を読まなくなったかというとそうではなくて、人はその時々のステージに必要なテーマの書籍に出会うようです。
それらを読んで適宜吸収するように努めました。
ただ無用に執着しないで、必要なくなれば手放せるようになっています。
その代わり、ぼくに新たな習慣が始まりました。
それが日記なんです。
さいごにまとめると、
あなたがいま大事だと思ってキープし続けているモノや考えを思い切って捨ててしまったとしても、失ったとしても、たぶんなにも困らないよ、ということです。
むしろ新たなチャンスやじぶんに出会える気がしています。
ということは、いま執着しているものをバッサリ捨てることがはじまりということですね。
さて、なにを捨てましょうか?
それでは、また。
やはり断捨離の王道テキストはこれ!人生が変わる一冊。