「では、これで全14回の講義を終えます。お疲れさまでした。」
(ふぅ〜、やり切った)
席を立ちぞろぞろと出口へ向かう学生たち。
片付けながら「さようなら」、ところどころに声をかける。
ボソボソと返す人、何も言わずに立ち去る人、中にはこの後に及んで「ボクって単位大丈夫ですかね?」と聞いてくる人も。
まぁほとんどの学生は無言で立ち去るのだが。
(ちょっと寂しいけど、それでいいのだ)
プロの端くれとして一期一会の精神で毎回授業をしていたとて、学生がどう受け止めていたのかは無関係だ。どう熱を込めたところで一部の学生は授業中に寝るし、スマホをいじる。どれだけ笑いを誘うことを言っても、基本的にはスベる(ぼくの場合)。
最後の授業だからといって何か特別好意的な反応も期待していないし、数年もやってりゃ最近の学生の気質もだんだんわかってきている。
そう、いつもこんなものなのだ。
学生たちにとってはたくさん履修している授業の中の1つに過ぎないのだから。
*
日も沈み、ちょうど夕方の帰宅ラッシュのタイミング。
今日はいつもより電車内が混み合っていた。座れなかった。
約30分ほど電車に揺られながら、後期授業の振り返りを頭の中でしてみる。恒例のひとり反省会。学生の反応がうすくてやや独りよがりな授業が多かったなぁ。寝る子も結構いたし。ライブでやっている意味ってなんだろう。もっと学生の関心を引くにはどう工夫できるかなぁ。まぁ今期もやれるだけのことはやったし、ま、いいか・・・
結局ひとり反省会はあっけなく終わり、無意識にスマホを開く。
次男くんからのわけわからないメールが数件、急いで返す気力もないので、ツイッターでも眺めようかと思ったが、ふと大学のポータルサイトを見てみた。
(おや、なにか、きている、ぼくに)
*
それは先ほど終えた授業を受けた学生たちからのメールだった。
などなど。
まずい・・・ちょっと、鼻水が。
ティッシュ持ってないし。
ジーンときた。うれしかった。
いい歳のおっさんが電車の中で少し泣きそうになった。
歳をとるたびに涙腺が緩くなるのはどうやら本当だ。
ほんの一部だけを(端折って)紹介してしまったが、他にもたくさんコメントが届いていた。
ふぅ〜と息を整えながら、なんとか踏ん張った。
車内にいたハゲ頭の乗客を凝視したりして、気をそらした。
お金ではないけど、何かしら価値ある報酬をいただいた気がした。
仕事の報酬とは決して、お金だけでは、ない。
こうやって主体的に自分の気持ちや感謝をちゃんと伝えられる若い方々がいるということに今更ながら感動した。
「みんなありがとう。なにより毎回授業では講師のぼくが一番楽しんで学んでいましたよ。」
教える者が、一番学ぶ。
だから、この仕事はやめられない。
何事も始まりがあれば、終わりがある。
春が来れば、また新たな学生との出会いが始まる。
それでは、また。