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父から贈られた一冊の本【アホは神の望み 村上和雄著 サンマーク出版】

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田舎から大学進学と共に上京して、ろくに帰省らしい帰省もせず大人になってしまったぼくに、ある時ふと小包が送られてきました。

送り主は父。
開けると、一冊の本でした。

「へぇ、どうしたんだろ。」

当時、忙しい毎日を送っていたぼくは積読のまましばらく放置していました。

人との別れというものは、ある日突然やってくるものです。
父が入院したと知らせがあって、次は他界したとの連絡でした。
生前に贈られてきた一冊の本が、形見のような存在になってしまいました。

葬儀を終え、自宅に帰ってきてようやくその本を開き始めました。

父は高校を出て地元で就職し、死に物狂いで子供たち2人を東京の大学に通わせてくれました。

大学にどれだけの費用がかかるかもろくに知らない若造がたまに帰省すると、両親のアドバイスを無下にしたり、軽くあしらうような言動をしたり、ほんと両親に失礼な態度だったことを反省します。

その本に書かれていた1行1行が、他界した父からのメッセージのような気がして、ボロボロ涙がでた記憶があります。

「もっと色々話したかったなぁ・・・」

それから、事あるごとにその本を開きました。
著者と父はもちろん別人ですが、迷った時、悩んでいる時、背中を押してほしい時、その時々でページを開くと、ヒントになる1行に不思議と出会えるのです。

「なぁどう思う?」

父に相談するかのような読書でした。
あっという間に線だらけになりました。

父がどうしてその本を贈ってくれたのか、今となってはそのわけを知る由もありません。

しかし何度も読み込みながら、父のメッセージがほんの少しわかった気もします。

著者が書いている言葉ですが、端的にいえば「もっとアホになりなさい」ということ。
小賢くなろうとせず、もっと大らかな器を持った愚鈍な人になれ、ということ。

当時、コンサルティング会社に勤めていたぼくは論理的思考であらゆる問題を解決できると錯覚していた時期がありました。

他者に対してもそんな勘違いをしたまま接していたのかもしれません。

父は、そんなぼくをみて早晩行き詰まることを予見したのでしょう。
でも、直接伝えたところで当時のぼくが反発するのは目に見えていた。

自分が伝えたい考えに近い著者の本を贈ることで、いつの日か自分で気づけるのではと思ったのではないか。

父が他界してはや8年が経ちます。
片付けていたら本棚の奥から出てきて、久々に手にしました。

たまには化けて出てきてくれないかなぁ。
色々話したいことあるんだけどなぁ。
(今のところ枕元に出てきたことは1度もありませんけど)

 

 

 

 

何度も読み返したくなる一冊です。
それでは、また。

 

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